= AORとウェストコースト 副題「悲しき1発屋達」 =


 どうも音楽業界は、AORという言葉が好きなようです。

 ここのところ、SILVER、FOOLS GOLDと続けて入手して聴いていたのですが、これらのアルバムに付いている帯の宣伝文句に“AORの名盤”とありました。

 AOR(Adult Oriented Rock)という言い方は、現在本国アメリカでは、使われていません。AR(Adult Rock)という分け方になっています。日本だけでこの呼称が残っているようです。オリエンタル(東方)という言い方が差別的な面もあるのでしょう。そして、ARはもっと広範囲な意味で使われています。ハードロック、ヘビーメタル、パンク、ダンス・ソウル、ラップなどといった範疇に明確に分類し難い、雰囲気のあるロックを指して使われるようです。

 当時、AORと呼ばれていたアーティストはBoz Scaggs・Ned Doheny・Nick Decaro・Bobby Caldwellなどがいました。ウェストコーストのミュージシャンは少なからず、AORの旗手達の近くにいたのも事実ですが、彼らをAORと言うのは、ビリージョエルをAORと言うようなもんです。

 未だ日本にはAORファンが多く、静かなブームがあって、AORだけを再発リリースするレーベルもあるくらいですから、多分、音楽会社は、AORと記載すると売れるだろうと考えているのでしょう。残念ながら私の周りにはAORを好まない者が多く、より多くの人に聴いてもらいたいので、個人的にはウェストコーストの分類にしてもらいたいところです。

 名誉挽回の意味を込めて、冒頭の2つのバンドが出したアルバムを紹介します。

* Silver

 副題通り一発屋です。邦題は「シルバー・ファースト」で原題は「SILVER」。但し、現在同名のバンドがヨーロッパに存在しますので、「Musician」としてタイトル別けをしている場合があります。Batdrof & Rodneyの延長に有り(Batdrofがメンバーの1人)、そのサウンドはコーラスが非常に綺麗です。入手が難しい事もあり、B&Rは「Life is You」しか聴いていませんが、R&Bは悪い意味で上品で、Silverは良い意味で下品であり、その下品さが味になっていると感じました。コーラスを効かせた曲があったり、ファンキーな曲、スローな曲と多種多様で、アルバム全体を通して、飽きがこなくて面白いです。1曲目「Musician」はいきなりスローでコーラスが綺麗な曲です。この曲をTimothyが一人アカペラで歌ったら最高だろう、ふと思いました。このアルバムからは「Wham Bam」がスマッシュヒットしています。

* Fools Gold

  アルバムを2枚出していますので、副題とはちょっとずれますが。
 1枚目「FOOLS GOLD」、数曲でジョー・ウォルシュとグレン・フライがプロデュースしています。完璧にウェストコーストサウンドです。ボーカルを除けばEAGLESそのものです。帯にはAORの文字は有りません。このアルバムを聴くと、EAGLESの弟分というのが納得できます。但し、ヒット性のある曲が有りません。この一枚を聴く限り、短命で終わったのも納得できます。
 2枚目「MR. LUKCY」、1枚目を聴いた後では、全く期待していませんでしたが、いい方向に裏切ってくれました。TOTOのJeff&Mike PorcaroとDavid Paichがクレジットされています。TOTO自身がボズ・スギャグスのバックバンド出身ですので、そのボズのアレンジに似た曲もあり、AORの名盤と書きたくなるのも分かりますが(最近ではTOTOですらAORに分類してしまう人もいるようです)、ウェストコーストバンドがAORに近い音を出しているだけのことです。
 キーボードが多用されているところが前作と大きく違いますが、ところどころでスライドギターを使ったり(PEDAL STEELかな?)、コーラスを聴くと、ウェストコーストサウンドの雰囲気を十分残しています。アルバムタイトルの「Mr. Lucky」はソウルサウンド的な仕上がりです。
 ここまで大きく化ければ、3作目があっても良さそうなのですが、レコード会社のバックアップが得られず、バンドの維持ができなかったようです。


 音楽の分類なんてあってないようなもんですから、気にしなければ気にしないでいいのですが。。。。




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