= SILVER “恋のバンシャガラン”
 何やねんそれ! =


 Silverは、76年に唯一のアルバム「Silver」(同名のバンドと区別する為「Musician」と表記するところも有り)をリリースして解散したグループです。日本でも数年前にテレビCMで彼等の曲「Wham Bam(邦題=恋のバンシャガラン)」が使われ、一時注目されました。

 他にも日本では、EAGLESのアルバム「One of these nights(75)」に収録された「Hollywood Waltz」に名前がクレジットされた、Bernie Leadon の実弟Tomが在籍していたバンドとして知る人ぞ知るバンドになっています。

 Silverは、実質John Batdorfを核としたバンドで、その音楽性はBatdorf & Rodneyの延長線にあり、“路線を継承しながらも時代に合わせた曲作りをしていた”と私は解釈しています(あくまでも私の解釈)。私の好みの音ではありませんが、Batdorf & Rodneyは「Life is You」を聴く限り、綺麗なコーラスを主体としたデュオです。そしてSilver唯一のアルバムをプロデュースしたのは、Batdorf & Rodneyのサードアルバム「Life is You」のプロデューサーTom Sellersでした。

 アルバムの1曲目に収められた「Musician」という曲は、正にBatdorf & Rodneyの路線で、Timothy Schmitの作品を彷彿させる綺麗なコーラス曲でした。Batdorfの声だと思うのですが、ハイトーンでちょっとだけTimやRusty Youngの声に似ているからかもしれません。一方、「Wham Bam」はウェストコースト調ディスコサウンドとでも言いましょうか、当時“70年代”のディスコサウンドを意識していたのではと思える何処かしら笑ってしまう曲です。“Wham Bam”以外の曲は純ウェストコースト調の綺麗な曲に仕上がっていて、ウェストコーストファンの方にはお薦めの1枚です。リードボーカルは数人でとっていたようです。廃盤の1歩手前で踏み止まっていますので、興味のある方は早めにゲットしてください。

 バンドの始まりは、Batdorf & Rodneyで3枚のアルバムを残して解散させたBatdorfが、Greg Collier/Brent Mydland と一緒に、フォークシンガーERIC ANDERSENのアルバム「Sweet Surprise(76)」に収録された"Crazy River"と "Dreams Of Mexico"の2曲にSilverの名前で、バックボーカルで参加したことでした( このアルバムにはTimothy Schmitもバックボーカルで参加しています)。

 その後2人が加わり、最終的なメンバーはJohn Batdorf (g+vo)/Greg Collier(g+vo)/Tom Leadon(bass+vo)/Brent Mydland(kb+vo)/Harry Stinson (dr+vo)の5人編成でレコーディング&デビューしました。

 残念ながらGreg Collierは調べがつかなかったので、他の4人の経歴について紹介します。

 Tom LeadonはEaglesのBernie Leadonの実弟ということで有名ですが、実はTom Pettyの旧友で、高校卒業の68年からLeadonが73年にバンドを飛び出すまで、2人のTomは一緒に活動し、70年に“Mudcrutch Farm Festival”を結成します。SilverではBassを担当していたようですが、MudcrutchではLeadonがギター、Pettyがベースでした。この関係でDon FelderはTom Pettyにギターを教えたのでしょう。残念ながら、Silver以降のTom Leadonの活動は不明です。

Bernieには2人の弟がいて、一番下の弟Markもミュージシャンです。MarkはTomからギターを習い、後にBernieからBanjoを習ったそうです。2001年に「Blue and Lonesome」というアルバムを自主制作しています。(http://www.markleadon.com/)


 Brent Mydlandは父親の仕事の都合上(アメリカ陸軍)1952年ドイツで生れ、高校時代にR&Rに惹かれて育ちました。Batdorf and Rodneyでキーボードを弾いていましたが、そのままSilverに誘われたようです。Silver解散後はご存知の通りグレイトフルデッドに参加、1990年7月26日ドラッグにより死亡しました。インターネットで調べる限り、海外においてSilverは、グレイトフルデッドのMydlandの在籍していたバンドというとらえ方をされているようです。

 Harry Stinsonはナッシュビルで育ち、10代の時にDottie Westの息子のロックバンドで場数を踏んで力を付けます。あのAMERICAと時々一緒に演奏していたこともあったそうです。その後カリフォルニアに移り、Silverに加わることになりますが、解散後はナッッシュビルに戻り、スタジオミュージシャンとして非常に多くの作品に参加しています。

 John Batdorfは前述の通りBatdorf & Rodneyで活躍した後にSilverを結成、その後はスタジオミュージシャンとして活動しながら生計を立てていたようです。90年代後半になるとMichael McLeanというパートナーを見つけ、再びBatdorf & McLeanというデュオを結成して作品をリリースしています。ファンの作品評を読むと、Batdorf & Rodneyのようなアコースティックな綺麗なサウンドを展開しているようです。現在Amazon米のリストには有りますが(バックオーダー扱い)、自主制作盤のようで、入手が難しいようです。

 今聴くとSilverは典型的なウェストコーストサウンドを展開していますが、Batdorfが考えていたのは、もっとアコースティックな音だったのではないでしょうか。そこら辺に長続きしなかった理由が隠れているのかもしれません。

Eric AndersenもTom WaitsのOl’55を76年に取り上げています。1部分を聴く限りでは、EAGLESのアレンジを参考にしたのではと思える仕上がりで、どちらが優れているかは、その人次第です。現在入手難です。





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