= Emmylu Harris 華麗なる転身? =


 アメリカにおいて、ゴスペル歌手やカントリー歌手はどんなポジションにあるのでしょうか。日本における演歌歌手のようなものなのでしょうか。今回取り上げるEmmylou Harrisは長らくカントリー歌手でありながら、ロック人脈にも精通している貴重な人物のようです。

 個人的には、Randy Meisnerの2ndソロ「One More Song(80年)」で取り上げた「White Shoes」を彼女も歌っており、そのイメージがあります。そしてリンダ・ロンシュタット/ドリー・パートン/エミルー・ハリス、そうTRIOというユニットが有ります。このユニットも、テキーラサーキットの人脈で実現したユニットということになります。

 もともと彼女は、Chris Hillmanの紹介でGram Parsonsのソロアルバム“GP”にバックボーカルで参加したのがはじまりでした。彼女はParsonsの秘蔵子として、極わずかな期間ですが、彼が亡くなるまで行動を共にします。Parsonsの作品の中でのボーカルは高く評価されています。最近のソロ作品では聴かれない、彼女の澄んだよく通る声がParsonsのボーカルを上手く引き立てているのです。これは、声が潰れたというのではなく、単に歌い方の問題と思われます。現在は女ニール・ヤングといった感じの歌い方です。

 ソロでの最初かつ最大のヒットは76年発表「Elite Hotel」に収録された「Together Again」で、この曲は00年にホンダ・シビックのCMに使われています。カントリー&ウェストコーストサウンドに仕上がっています。当時カントリー界の歌姫というフレーズで紹介されることが多かったのですが、70年代のアルバムジャケットの写真を見ると確かに美人なのですが、必ず翳りを持った面影の物が使われていて、歌姫とはちょっと違った雰囲気をもっています。

 70年代に彼女のカントリー歌手としての評価は確立しますが、80年代は合間を縫ってロックの接近を行っています。「White Shoes」はそういった試みの1つだったのではないでしょうか。ファンの評価は最悪だったようです。

 90年代後半から彼女の作品に変化が現れます。95年の「Wrecking Ball」からダニエル・ラノアをプロデューサーに迎え、バックバンドにSPY BOYを従えたことで大きくサウンドが変わるのです。彼らを大変気に入ったようで、98年には「SPY BOY(98)」というタイトルのライブアルバムをリリースしています。

 音楽的には、カントリーの範疇からは完全に飛び出しR&R系の作品になっていますが、サウンド処理の面からみると余りパットせず、Emmylou Harrisというイメージで聴くと、何となく背景にカントリーミュージックがあるなということが分かります。新たなファンを取り込んだ反面、彼女のOLDファンは戸惑いを隠せないようです。リンダ・ロンシュタットとのダブルネームでリリースした「Western Wall-Tucson Sessions(99)」は、もう少し変わったことをやっていて面白い作品です。少なくとも、私はそんな印象を受けました。

 基本的にエミルーはリンダのように、他人の曲を歌って、それに新たな解釈を吹き込むタイプの歌手なのですが、次の最新作「Red Dirt Girl(00年)」では今までのキャリアの中でしたことがなかった、全曲自身作で飾りました。もはやカントリーという枠から飛び出したというのが専らの評判のようです。

 Parsonsはロックとカントリーの融合を試みながら、その途中で頓挫してしまいました。もしかすると、Emmylou Harrisがその意志を引き継いだのかもしれません。最近の彼女の作品を聴くと、Parsonsの影を感じてしまうのです。



ドリー・パートンはオリビア・ニュートンジョンでヒットした「Jolene」、そしてホィトニー・ヒューストンのカバーした「Always Love You」のオリジナル歌手として有名ですね(他に映画「9時から5時まで」に出演したことでご存知の方もいると思います、まぁ当時でもおばちゃんでしたが)。
アルバム「White Shoes(同名曲収録)」(83年)は、店頭で見かけることは殆ど有りません。現在ドイツ盤のみのようです。ハスキー掛かった声で、若かりし頃のスティービィ・ニクスを思い出すボーカルです。多分、当時このテイクが、日本の靴のCMに使われています。あまりオンエアはされていませんでしたが。
ニコレット・ラーソンの最初の結婚相手はエミルーのバックバンドのメンバーであった為、その紹介で数多くエミルーの作品に参加しています。





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