= Eric Justin Kaz 1000年の出会い =


 1946年ニューヨーク市ブルックリン生れ(47年としているところもある)。彼の経歴を調べると、ある時期はEAGLESに非常に近い所に居たと思われるのに、Randy Meisnerのソロアルバム以外で、彼の名を見つけることはできません。それでも80年代以降は作曲家・ライターとして静かに活躍を続けていました。

 彼は60年代中盤から後半にかけてグリニッジヴィレッジでアルバイトをしながら音楽活動をしていました。その時にHappyとArtieの Traum兄弟に出会い、意気投合して彼らデュオチームにKEYBOARD奏者として加わります。

 バンドは“CHILDREN OF PARADISE”と名乗り、66年にコロンビアで1枚のシングルを作成します(但し、これがリリースされたかどうかは確認できませんでした)。その後、Happyがバンドを抜けた為、バンド名をBearと変えて、Verve Forecast Recordsから68年に「Greetings, Children Of Paradise」というタイトルのアルバムをリリースしました。この時、このアルバムをプロデュースしたのが、同じレコード会社に所属していたAppletree theaterのJohn Boylanでした。

 当時の資料を見ると、BearのメンバーはArtie(g/v)、Eric(k/v)、Steve Soles(vo)の3人で、ベース(Skip Boone)とドラム(Darius Davenport)はレコーディングの時だけ参加したスタジオミュージシャン(?)だったようです。アルバムジャケットの写真にも3人しかいません。

 またEricは曲作りでも参加していますが、リードボーカルはSteveで、彼はピアノに専念して、ボーカルはバックボーカルだったのではと推測しています。現在このアルバムは廃盤でCD化されていませんが、ネットを探すとレコードはUS$30程度で入手できます。

 その後バンドは解散し、EricはBlues MagoosにKeyboard奏者として参加します。このBlues Magoosというグループは、今は60年代ガレージ・サイケ・バンドの1つとして認識されていますが、当時は日本のGSの手本になったグループの1つで、GS全盛期に日本にも来日しているそうです。「NEVER GOIN' BACK TO GEORGIA(69)」と「GULF COAST BOUND(70)」の2作に参加しています。彼の参加した時期のこのグループは、レコード会社もMERCURYからABCに移り且つ下り坂の時期で、その後すぐに解散しています。彼のキャリアにおいて、唯一このグループに在籍していたことが意味をなさない(さほど重要でない)ことだったのではと見受けられます。

 1972年に、HappyとArtieのTarum兄弟と一緒にウッドストック系のミュージシャンらによるセッションアルバム「MUD ACRES: MUSIC AMONG FRIENDS(72)」に参加します。そして、それとほぼ同時に初のソロアルバム作成のチャンスにめぐり合います。

 Eric Kazは人間関係・コネクションには本当に事欠かない人のようです。ソロアルバムを作ることになったきっかけは、現在ジャズの発掘人として知られるMichael Cuscuna(マイケル・カスクーナ)が、当時アルバムをプロデュースしていた最中のBonnie RittにEric Kazを紹介したことにありました。彼の曲「Love has no pride」が採用され、Rittのアルバム「Give it up(72)」に収録され、そのアルバムがまずまずの評価を得たことにより、カスクーナのプロデュースでアトランタレーベルからソロデビューすることができたのです。

 初ソロ作品「If you are lonely」は、当時アメリカでは全く評価されなかったようですが、現在日本のファンから根強く支持される作品となっています。後のAmerican Flyerなどの作品がカントリーやウェストコースト色が強い作品になっているのに対し、このソロ作品はR&B系のアルバムに仕上がっています。彼のボーカルはパンチのある声ではなく、どちらかというと、力を抜いて、何気ない歌い方をしています。それが当時のアメリカ大衆が受けつけなかった理由なのかもしれません。ウッドストック系の音というより、グリニッジビレッジで揉まれて熟成したようなサウンドです。

 彼自身のソロアルバムは売れませんでしたが、翌年リンダ・ロンシュタットがアルバム「Don’t Cry Now(73)」で「Love has no pride(この曲のプロデュースはJohn Boylanです)」を取り上げヒットさせると、人々は“Eric Kaz”の名前に注目しだすのです。



 68年「Greetings, Children of paradise」- Bear
 69年「Never Goin’ Back to Georgia」- Blues Magoos
 70年「Gulf Coast Bound(70)」- Blues Magoos
 72年「Music Among Friends」- MUD ACRES
 72年「If you are lonely」ソロ作品(Eric Justin Kaz)
 73年「Cul De Sac」ソロ作品
 76年「American Flyer」- American Flyer
 77年「Sprit of Woman」- American Flyer
 78年「Craig Fuller/Eric Kaz」Craig Fuller & Eric Kaz
 02年「1000 years of Sorrow」ソロ作品

* American Flyer;“Blood Sweat & Tears”のSteve Katzに“Pure Prairie League”のCraig Fuller、それにEric Kazがメンバーだったわけですからスーパーグループですね。そしてプロデューサーはGeorge Martin....A^_^;)いやはやなんとも凄いです。
* John Boylan;Terence Bolyanの兄で、Linda Ronstadtの3作目「Linda Ronstadt(72)」と4作目「Don’t Cry Now(73)」の一部をプロデュース、そしてその頃のリンダのバックバンドは言わずと知れた後のEagles。
* Eaglesはリンダのソロアルバム3作目「Linda Ronstadt(72)」の後にデビュー、4作目「Don’t Cry Now(73)」にはリンダ版“Desperado”が収録されています。


 Eric Kazは、アサイラム系のシンガーソングライターではありませんが、随分前からコーナーで取り上げたいと思っていたアーティストでした。当時はインターネットを調べても全く彼の資料が無く、長い間ペンディングとしていました。02年に、主に未発表であったテイクを中心としたアルバム「1000years of Sorrow(1000年の悲しみ)」がリリースされると、そのアルバムに同封されていたライナーノートを参考に、彼を紹介するサイトが一気に増えてしまいました。“American Flyer”や“Craig Fuller/Eric Kaz”については、そういったサイトで解説を拾える為、彼の前半のキャリアについてまとめてみました。また、プー横丁さんは昨年の来日コンサートやアルバムに関与している為、本人からの直接の話を紹介できるので、どんなにあがいても勝てませんが、なるべく特長を出したつもりです。如何でしょうか。


 昨年(02年9月)のコンサートに行かれた方で、感想を寄せていただければ、このコラムの後に続けさせていただきます。




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