= Voiceの魅力 Timothy Bruce Schmit =


 彼はガレージバンドのNew Breedでレコードデビューを飾った以降、Glad、POCO、EAGLESと渡り歩き、EAGLES解散後にソロに転向します(彼のバンドキャリアはひさちゃん作成のEAGLESファミリツリーが基本情報に有りますので参考にしてください)。特にPOCOではオーディションの最後までベースの座をRandy Meisnerと競います。Randyは格の違いがあったものの、Richie Furayらと同じマネージメント事務所であったことも選ばれた要因だったのではないでしょうか。

 EaglesはRandyの受け持っていた高音ハーモニー補強の目的でTimを指名しますが、ベース演奏のスタイルは別として、明らかにボーカリストとしての違いが有ります。Randyのボーカルは同じ高音でも、地声でのコーラスで、ファルセット(裏声)を使うことは殆ど有りませんでした。

 一方Timの声は、あくまでも主役を引き立てるファルセットで力を発揮しています。自分の声質や性格を考慮して、個性よりも調和を選んだのかもしれません。この技量はHenleyやGlennには有りません。勿論、裏声と雖(いえども)も練習を積まなければ綺麗に発声することはできません。

 もともとNew BreedやGladでは8割以上リードを取る看板ボーカルでしたが、選曲の悪さか、他のメンバーが歌わないので歌った、とでも言いたくなるボーカルでした。POCO時代に少しずつ成長します。当初POCOの看板はRichieでしたが、Richie在籍時の後半から、徐々に力を付けて、聴けるボーカルになります。

 一番その魅力を発揮した曲がアルバム「Head Over Heels」の1曲目に収められた“Keep on Tryin”だと思います。この曲はTimのボーカルにメンバーがコーラスを付けたもので、声質の似たRusty Youngがいたこともあり、綺麗なハーモニーを形成しています。そしてこれが後の一人アカペラへつながったのだと思います。その一人アカペラは、皆さんご存知の「So much in love」で完成し、その後の彼のアルバムでは必ずそのスタイルが披露されています。

 POCOの初期時代から、リンダ・ロンシュタットやジーン・クラークの録音に参加していましたが、最初にTimの声に目を付けたのはドナルド・フェイゲンでした。74年にスティーリーダンのアルバム「Pretzel Logic」に参加すると、多くのアーティストから声が掛かるようになります。ドナルド・フェイゲンはソロアルバムではTimを起用していませんが、スティリーダンでは、彼のバックコーラスを使い続けます。バラード調やAOR調の曲には彼のファルセットはよくマッチします。Terence Boylanはアサイラムに残した2枚のアルバムの両方で、Timを起用していて、彼の声がいっそうBoylanの曲を引き立てています。

 TIMは、ソロ・アーティストとしての成功を掴んだとは決して言えませんが、インタビューでTIMが“EAGLESはHenleyとGlennがいて成り立つバンド”と言っていました。EAGLESに参加後は、脇に徹することを選んだのかもしれません。勿論RandyはEAGLESの創世記に立会い、少なくともその時期にはRandyやBernieの方がキャリアは上でしたから、そうした態度を比較すること事態が間違いで、バンドの成功と共に対立が生じるのは自然な流れだったのかもしれません。




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