= Black Tieの謎 =


 過去2度ほどこのコーナーで取り上げており、またBBSでも時々話題にしていますが、Randyの未発表曲集もリリースされたこともあり、再々再度とりあげます。くどいですか?

 まず最初に何が謎かご説明致しましょう。

 Black Tie唯一のアルバム「When the night falls」がLP(ビニールレコード)でリリースされたのは1986年のことでした。この時、収録されたバディー・ホリーのカバー曲「Learning the game」はRandy Meisnerがリードボーカルを取っていました。出だしはJimmy Griffinらのコーラスのサビで始まり、本編をRandyが歌っていて、伴奏もギターだけのシンプルなものでした。曲の長さも1分50秒ほどです。

 ところが、90年にCD化された時は、この曲はJimmy Griffinのボーカルを取るテイクに差し替えられていました。Jimmyのテイクにはストリングスが加えられて、Randyの素朴なテイクよりも、小奇麗に仕上げられています。

 91年に出た日本盤CDの解説には、『89年にRandyの“歌う”「Learning the game」がカントリーチャートを上り』とあり、また他にも雑誌でそのように説明されています。

 果たして、これは本当なのでしょうか?

 80年代後半、Randyは一時期Rick Robertsと活動を共にし、ライブをこなし、レコーディング寸前であったことが伝えられています(最終的にPOCOを選んだ為、実現しなかった)。そのことからも、かなり早い時期にBlack Tieを離れていたと推測できます。そしてこの89年にRandyは、POCOのオリジナルメンバーでのリユニオンに参加していることは、皆さんもよくご存知のことです。既にバンドのメンバーでない者がリードボーカルを取る曲をシングルカットするのでしょうか?

 前回、この話題をコラムにした時は、“Randyが歌うテイクは紛失したのでは”という仮定のもとで、お話しました。今回は別の仮説と検証をしてみました。


<仮説>
 Randy在籍時に、彼の「Learning the game」をシングルカットしたが、その時は全く不振で、Randyは失意でバンドを脱退。数年後にどこかのラジオ局のDJが気まぐれに流したその歌が、リスナーの耳に留まり陽の目を見ることとなる。気を良くしてレコード会社は、再シングルカットとCDでのアルバム再発を決める。ところが契約上の問題と既に脱退している為、Randyが参加した曲を差し替えることになる。

<検証>
 89年にリリースされたと言われるシングルレコードが、どちらのテイクでリリースされていたのかを調べる。Black Tieはレアなアイテムですが、プレミアは付いていません。15年以上前のシングル・レコードが新品状態で見つけられるので、怪しいのですが、価格も高くなく、送料込みでUS$10程度です。思い切って買ってみることにしました。現在CDは中古市場にダブついているようですが、LPのビニールレコードはとんと見かけません。

<結果>
 ネットショップのリストを見ると、レコード番号が2種類存在するようでしたが、届いた物は同じ(番号BR-3-7)でした。この番号のシングル・レコードが、現在一番出回っているのではないでしょうか。レーベルを見る限り、海賊コピーには見えませんが、最近の物は精巧ですから、何とも言えません。ジャケ写真は有りません。コピーライトの年が1990年になっています(必ずしもコピーライトの年が、リリース年とは限りません)。残念ながらJimmyのリードボーカルテイクです。


 結局、ランディ・バージョンが本当にシングルカットされたかについては、疑わしいところで、Randyの脱退によって、契約を含む諸問題が発生すると判断し、差し替えられたとする解釈が妥当のように思えます。

 余談になりますが、Randyの前夫人Jenifferとの離婚(81年)は、後に彼女が税金の支払いをめぐって訴訟を起こしたこともあって、ケーススタディーとして大変有名だようです。Eaglesのロイヤリティのうち40%を離婚の慰謝料として、双方が死ぬまで支払わなければならず、EaglesからJenifferに直接渡されています。後年、彼女は、ロイヤリティに対する税金は、Randyの取分から支払われるべきだと、支払った税金の返還を国に求めましたが、棄却されていますまたRandyの金銭の使い方は、大判振る舞い過ぎた時期があったそうで、管理人が付いているようなので、その他の作品の出版も複雑な背景があるのかもしれません。


Black Tieの結成の年度は、Dreams Villeの“Meisner, Swan & Rich”及びRandyのライブ“Dallas”の解説に間違いがあり、1990年結成となっています。但し、同社のHPではRandyの解説では訂正をせずに、Jimmy(James)Griffinのところで86年にアルバム・リリースと訂正しています。細かく気にされる方はご注意を。
日本盤CDには84年に結成とあり、バンドとしての初めてのライブにはBernie Leadonも参加していたそうです(但し、その1回きり)。この頃は、Bernie自身、アル・パーキンスらとゴスペルカントリーグループの活動をしたり、多くのアーティストの作品にゲスト参加をしており、カントリー色の比較的少ないBlack Tieに興味が持てなかったのかもしれません。Black Tieは、少なくとも、バンジョーを多用するバンドではありませんでした。
CD化の際に「Chain Gang」も新しいテイクに差し替えられていますが、こちらはもともとJimmyが歌っていました(Randyのバックコーラスが確認できるものでもない)。





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