= Glenn Frey “アーリーイヤーズ” =
60年代のデトロイトと聞くと、R&Bの分野のビッグレーベル“モータウン”を思い出す人が大半でないでしょうか。ところがこの地では黒人音楽だけでなく、ロックも盛んで、60年代中盤には、かなりの数のローカルガレージバンドが存在し、活動していました。
Eaglesファンには、すぐにBob SegerやGlenn Freyの名前が浮かぶのではないでしょうか。特にBobはデトロイトのローカルチャートの常連でした。
1966年半ば、Glenn少年はHideoutという名のバンドを結成します。このバンドは直ぐに名前を“The
Subteraneans”に変えます。この頃の彼はまだ楽器が弾けず、リードボーカルに専念していて、バンドの主な活動の場はウェディングパーティーや学校のダンスパーティーでした。演奏していた曲も、当時のUKのバンドブームにあやかったカバー曲ばかりでした。
そんな最中、GlennはUKのバンド、WHOのRoger Daltryのボーカルスタイルに触発されたのです。WHOのようなバンドに憧れ、Keith Moonばりのドラムを叩ける者を探しました。父親の薦めもあって、いくつかのガレージバンドを掛け持ちしていたLenny Mintzをドラマーとして加え、バンド名も“MUSHROOMS”に変えて再出発しました。
このバンドのオリジナルメンバーはBill Barnes(lead guitar)、Glenn Frey(vocal)、Doug Gunch(rhythm guitar)、Lenny Mintz(drums)で、ベースがいません。しかし、このより頼もしいドラマーにより、すぐにMUSHROOMSは評判になり、活動の場をHarper Woodsの近くにあったHideout Clubに移すことになります。
このHideout Clubはレコードレーベル“Hideout Records”を所有しており、最終的にGlennはMUSHROOMSの名で唯一のシングル“Burned”
(c/w “Such a Lovely Child”)をローカルリリースし、ローカル番組“Robin
Seymour's Swinging Time”の出演までも果たしました。
その後、クラブ側の提案でMUSHROOMSはキーボードを加え、彼等は演奏の腕を上げていくのですが、1つだけ欠点がありました。誰も曲が書けなかったのです。クラブマネージャーのDave
LeonとPunch AndrewsはHideoutに出入りする者達に声を掛けますが、適当と思われる人物がいなかったのです、1人を除いて。
そうそれが当時20歳だったBob Segerでした。前述のMUSHROOMS唯一のシングルレコードはBobの作で、彼のプロデュースによるものです。
“The Four Of Us”というグループは、グロスポイント(地名)で名の通ったフォークロックグループで、既にディランやバーズの曲を含む数曲をHideoutで録音していました。このグループのコーラスや演奏諸々が、GlennとMUSHROOMに衝撃を与え、競演することで、Glenn達をより高いレベルのバンドへと押しやったのです。
皮肉にも、この後GlennはThe Four of Usに加わり、ドラムのLenny Mintzとリズムギターの
Doug Gunch はThe Gangというバンドに移り、MUSHROOMSは分裂して終りを告げます。但し、残念ながら、そのThe
Four of Usもこの後長くは続きませんでした。
これまでに、Glennは独学でギターを学んでいましたが、The Four of Us時代、少しの期間だけベーシストとして在籍していたJeff
Alborellから、ボーカルとギターの手ほどきを受けます。 そして次のデトロイト時代最後のバンド“Heavy
Metal Kids”で、ギター兼ボーカルを担当することになるのです。勿論、このバンドも長くは続かず、何回かギグをこなすと数ヶ月で分裂し、LAへの思いが膨らんでいたGlennはデトロイトを飛び出すのです。
* | 03年の年末に、BBSでUnderdogsというバンドの話題が上りましたが、今回のコラムを書くにあたっての資料収集では、残念ながらBobやGlennとは全く関係のないバンドであることが分かりました。勿論、Underdogsはデトロイトという同じエリアでそこそこの名を上げていたバンドですから、全く接点が無かったわけではないと思います。クラブの力が強かったようですので、その依頼で他バンドのレコーディングに手を貸していたことも十分考えられ、Underdogsはそのうちの1つかもしれません。しかしながら、少なくとも2人はこのバンドに所属したことはないようです。 UnderdogsのメンバーはDAVE WHITEHOUSE(Vocals, Bass)、TONY ROUMELL(Lead Guitar, Vocals)、CHRIS LENA(Rhythm Guitar, Vocals)、MICHAEL MORGAN(Drums, Vocals)で HIDEOUTの看板バンドの1つだったそうです。 |
* | Hideoutの音源の一部は、「Friday at the Hideout」というタイトルでCD化されています。レコード時代には、何度もオムニバス盤がリリースされていたようです。Glennの関係したのはMUSHROOMS“BURNED”だけと思いますが、UnderdogsやGlenn以前のTHE
FOUR OF USも収録されていて、歴史的な1枚と思います。 また、こうした作品を聴くとどうしてもRandyのPOORやTimothyのNew Breedと比較してしまうのですが、流石にモータウンの地元、レベルは非常に高い作品ばかりです。 |