= Patrick Simmons Part 2 メロウ・アーケード =


 当初CD化されていないと思っていた煙草兄弟のオリジナルメンバー、Patrick Simmonsの初ソロアルバム「Arcade(邦題“メロウ・アーケード”83年)」。その存在を知ってから約10ヶ月、やっと聴く機会に恵まれました。CD化は91年でした。

 このアルバムは日本でしかCD化されておらず、初めてその存在を知った時は、約US$400であったのにも関わらず、10日ほどで買い手が付いて消えていきました。喉から手が出るほど欲しくても、脱腸の思いでも無理です。

 ちなみに04年1月にYahooでの出展があり、1.3万円ちょい上で落札されていました(落札者は、直ぐにebayで転売したようです)。

 EAGLESもDOOBIEも正式解散は同じ年、82年です。長らく活動を停止していた後に解散発表をしたEAGLESとは対象的で、フェアウェル・ツアーを行っての解散です。そのビデオはテレビ放映もされていますから、ご覧になった方も多いと思います。パットにジョン・マクフィー、そしてトム・ジョンストンを加えたトリプルギターで演じる“LONG TRAIN RUNNIN”と“CHINA GROVE”は圧巻でした。

 最後のオリジナルメンバーであるパットが抜けるということで、解散しようとなったと聞いています。実際にはそれだけではないと思いますが、ビッグバンドの重責に精神的に押しつぶされたTom Johnstonを見て分かるように、バンド運営は決して楽なものではなかったのでしょう。それでも、滅茶苦茶になって解散したEaglesとは対照的なものでした。

 前置きが非常に長くなってしまいましたが、肝心の音は如何でしょう!?

 Doobieがワーナーブラザースからリリースされていたのに、何故かElectraレコードからのリリースです。

 1曲目「Out on the streets」からぶちのめされました。“おいおい、これDoobieの曲のパクリじゃん、『Jesus Is Just Alright』のフレーズを堂々と使っているわい!”勿論、使ったところで、誰も文句なんぞは言いやしませんが。
 GLENNの“New Love”の頭=「After the thrill is gone」なんてもんじゃございません。

 2曲目の「So wrong」はシングルカットした曲で、チャートの40位台まで上がっている曲です。当時はディスコ調のサウンドに聴こえていましが、今聴くとチャキチャキのDoobieサウンドに仕上がっています、但し後期の。(笑)

 4曲目の「Why you given’ up」この曲も、Mike McDonaldがバックボーカルにいるせいなのか、後期Doobieサウンドです。

 ここで、簡単にレコーディングに参加して面子を紹介すると、DoobieからはMike McDonald、Tom Johnston、Jeff Baxter が参加していて、BassにLee Sklarの名前を見ることができます。プロデューサーはJohn Ryanを起用していますが、10曲中3曲はTed Templemanがしています。

 6曲目の「Knocking at your door」は、Dパープルの「Smoke on the water」の有名なギターフレーズを彷彿させるギターリフを入れ、多少ハードな仕上がり。勿論ボーカルはPatですが、歌い方はフォリナーのルーグラム風です。

 アルバム最後の2曲「SUE SAD」と「DREAM ABOUT ME」はスローな曲です。ファルセットのコーラスがDoobie調です。

 アルバム全体は約37分と短く聴き易い秀作に仕上がっています。

  パットがリードボーカルを取ったDoobie初期の代表曲「SOUTH CITY MIDNIGHT LADY」、この曲はDoobieの中で一番ウェストコーストらしい曲です。それとは逆に、77年のジョンストンがまだ居た頃のアルバム『LIVIN' ON THE FAULT LINE』に収録されている「Echoes of Love」という後期Doobieの伏線となる曲が有ります。結局、パットもマクドナルドも、ジョンストンと比較すると、パンチの効いた声質ではないので、初期の黒く土臭い路線を捨て、ファルセットと地声を上手に使い分けるボーカルスタイルとコーラスワークを採用することになるのです。  

 このソロアルバムでは、こうした後期Doobieサウンドを上手く実現しています。日本販売のみのセカンド・ソロが、初期のDoobieサウンドであったのとは対象的です。このアルバムも“AORの名盤”と言う言葉で引き合いにだされてしまうのでしょうが、そんな枠に収めて欲しくない名作です。

 83年というと、AORが完全に下火になり、TOTO・Journey・REO Speed wagonらの大衆ロックが台頭してきた時代で、このアルバムも残念ながらスマッシュヒットに終わってしまいます。


Electraレコードの再発だと、海外ではWoundedbirdかRhinoのあたりで可能ではないでしょうか?日本だとワーナージャパンが最有力でしょう。但し、Doobie自体が本国アメリカでメジャーとの契約をしていないと思いますので(マイケル・マクドナルドですら、難しい状況です)、それと絡ませてとなると、やはり再発は容易でない状況です。
セカンドアルバムでは、Pat Simmonsに名前を縮めています。オークションだと値が吊り上げられてしまいますが、中古ショップで見つけられれば、2千円前後です。但し、海外では高値が付きます。





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