臨時6号 輸入CD規制法 =


 2004年6月3日、当初、還流(逆輸入)CDのみを対象としていた法案が、輸入CD全般を対象ともできる法へとすりかえられ、文化科学委員会原案通り、衆議院本会議で可決されました。

 この背景には、RIAAなどからの強力な意見があったことが明らかにされています。(同じ1枚でも洋楽国内盤という形にすると高く売れるので、RIAAにとっては収入が増え都合がよくなります。その為、RIAAは輸入盤規制を強く求めたと推測されています。)

 また日本国内では、還流CD問題から輸入権問題に事が歪曲された時、事の主体が、エーベックスからメジャー5会社(ソニー、ワーナー、ユニバーサル、BMG、EMI)に移りました。


1)輸入盤規制法

 この法は、対象とする輸入CD(メーカーの任意による権利放棄により、現時点では主にアジア地域でプレスされた邦楽還流盤のみです)を配布目的で輸入すること、そして販売することを規制するものです。

★現時点で大手レコード会社は、本法を還流輸入盤以外の並行輸入盤に適用・行使しないと、表明しています。ですから、法の施行直後から一般の輸入盤が買えなくなることはありません。法が成立した今、問題となるのは、“一旦法が成立すれば、いつでもそれを摩り替えることができる”ことなのです★

2)一般並行輸入盤に適用された場合

 もしこれが、一般並行輸入盤に適用・行使されたとしたら、店側としては、日本盤が存在する物や計画が有る物は当然販売できませんが、日本盤が存在しなくても(規制の対象物となっていなくとも)、将来日本盤が販売される可能性が有る限り、恐くて仕入れられなくなるのです(在庫のある物が対象となった場合、自費処分しなければならなくなります)。つまり、どのCDがいつ日本盤化されるなんて分かりませんから、輸入盤全般を恐くて取扱えなくなるのです。そうなると、当然、競争原理が外れ、洋楽国内盤CDは値上がりすることが容易に想像できます。

3)個人輸入はどうなるのでしょう?

<一般並行輸入盤に適用された場合の仮定です、誤解無きよう>

 この法律は、配布目的で輸入することを規制したもので、個人で楽しむために輸入することは対象外です。しかし本法が一般輸入CDにまで適用された場合、個人利用と販売目的の輸入との区別が付かない為、税関で一律に取り締る恐れがあるというネガティブな意見もあります。この見解については、下記の過去の慣習から私は否定します。

★海外通販でCDを買った場合、禁制品(判り易く言えばアダルト無修正ビデオとかがそうです)と思われる物は、まず税関で止められて受取人に通知がされます。そこで廃棄か発送人への返送の確認を求められます。禁制品でない場合は、抗議をすれば良いのです。わずか数枚のCDであれば、個人の鑑賞用と主張すれば常識として通ります。勿論、抗議を怠ればそれまでです。

★旅行で買って来た場合、日本の空港の税関員が、たった1枚の新品未開封のCDを見つけて、それを商売目的ですねと指摘することは、常識として考えられません(仮にしたとしたら、それは悪意です)。逆に、同じタイトルのCD数十枚を見せて、“個人で楽しむ物です”は通用しません。

同一タイトルは1枚まで可能という基準が有る国もあります(数百タイトル各一枚でも、それが通るかは不明、手荷物で持ち込める世間一般の常識の範囲と思います)。

 上記いずれの場合も、その基準は数量次第と考えるのです。勿論、これは保証された見解ではなく、あくまでも過去の慣習によるものです。

 中古盤は輸入盤であっても規制対象外です。

4)落とし穴

 ところが、この法には落とし穴が有ります。この法のおかげで、製造元の国のメーカーは、日本のこの法を根拠に、日本への輸出禁止をすることができます。また、店側もトラブルを避けて、任意で日本への販売を止めることもできます。そうなってしまうと、私達には何もできなくなります。勿論、今も法の有無に関わらず、海外在住の客への販売は任意ですが、そうしたショップが増える可能性が有ります。

5)還流盤規制は必要か?(あくまでも個人的見解)

 事の発端となった還流盤ですが、それ自体を規制することがおかしいのです。現時点では、アジア盤はオリジナルの1〜2ヵ月後のリリースです。将来的に同時発売になっても、それが日本に入るのは最短でも半月後です。今は中古に並ぶのも早いですし、待っていれば一定期間が過ぎた後にレンタルだってできます。そして、消費者は還流盤が、特別仕様で無い限り、中古買取やオークションで高値が付かないのを知っています。ですから、どの盤を手にするかは消費者の選択であるべきなのです。還流盤と共存すべきだったのです。CCCDを出し、再販制度を維持し、輸入盤を規制する法を作らせ、それでも売上が伸びなかったら、次は何をやるのでしょうか!?

6)小売店の反応

 80年代にMTVのビデオクリップが注目されると、テレビでも洋楽のチャートを紹介するようになり、洋楽を聴く人口が飛躍的に伸びました。その成長に一役買ったのが、タワーレコードやヴァージン、そしてHMVといった大型輸入盤小売店でした。現在これらの店舗では、輸入盤に限らず国内盤も販売しており、国内のレコード会社の売上に大きく貢献している為、こういった小売店の声を無視できなくなっています。

 本件は、小売店にとって死活問題です。主にHMV及びタワーレコードの働きにより、今回成立した法案には、13項目の付帯決議が付けられました。但し、付帯決議ですから、法的効力が強いものではなく、今後も注意注目が必要なことには変りありません。



 この法が間違って運用された場合、私達は高い代価を払わされるばかりでなく、洋楽のみならず、多くの地域の音楽を幅広く聴くチャンスを失うことになります。私達にできることは、法が正しく運用されるように監視することと、破られた時に声をあげることです。法案が可決されたこれからも、やれることはあります!



<各小売店声明>
Amazon JP
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/tg/browse/-/1162670/ref%3Damb%5Fcenter-1%5F92438%5F2/249-3888172-2561914
HMV JP
http://www.hmv.co.jp/help/Main.asp#1909
Towerrecords JP
http://www.towerrecords.co.jp/html/tower/company/news.html


RIAJ(社団法人日本レコード協会)
http://www.riaj.or.jp/(トップページ)
http://www.riaj.or.jp/whatsnew/w040518.html
RIAAとの質疑応答書(原文及び和訳)が有ります。ここでRIAAは、“輸入盤を規制することは、その地域から海賊盤を締め出す有効な手段となり、導入を歓迎する”趣旨の説明をしています。RIAAの意見書が明らかになり、あわてて付け足したとも取れますし、そうでないかもしれません。解釈は、皆さんにお任せします。

ITmedia輸入盤規制法に関しての記事
http://www.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0405/12/news054.html
http://search.itmedia.co.jp/?whence=0&max=10&result=normal&query=%97A%93%FC%94%D5&idxname=&sort=score

参考サイト
http://slashdot.jp/articles/04/06/03/0927219.shtml
http://sound.jp/stop-rev-crlaw/index.html
http://symposium.seesaa.net/




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